2015年12月27日日曜日

ヤクルトの話、カープの話。


◇ブームを裏切り今季もBクラス目前。広島カープに足りなかったのは何か? Number Web posted2015/09/30 11:05

 手の平はかわいていた。

 9月27日、マツダスタジアム。グラウンドでは、Aクラス入りが目標となった広島と、逆転優勝にわずかな望みを残す阪神が戦っていた。

 夏の終わりを感じさせない強い日差しが、阪神ファンの黄色と広島ファンの赤で染まったスタンドに降り注いでいたが、グラウンドからはまるで熱が感じられなかった。両軍ともに混戦から脱落した喪失感を切り替えられないままプレーしているようだった。

 開幕前に大きな期待を背負った広島は今年も優勝を逃し、Aクラス入りも難しい状況となっている。

 あれだけ盛り上がったのにもかかわらず、チームに“足りなかったもの”は何か。グラウンドに視線を向けスコアブックを記しながら、頭の中で答えを探してみた。


◆開幕直後の7連敗は問題ではなかった。

 資料に目を移せば、3月末から4月上旬にかけての●●●●●●●(7連敗)が目を引く。

 開幕直後の7連敗は確かに広島の重荷となった。借金完済までに4カ月以上を費やしたのだから当然だろう。ただ、それが答えだとは思わない。戦績をまとめた資料だけをにらみつけても、ピンと来るものはない。

 パソコンに映る他球場の経過を見ると、巨人と首位決戦をしているヤクルトがリードしていた。

 ふとヤクルト関係者の言葉が思い出される。

「今、個々を見れば調子は決して良くないよ。ただ、チームがひとつになって戦っている。監督がうまく選手を乗せている」

 まだ広島にも優勝の可能性があった9月上旬。神宮球場での3連戦の前、「強いですね」という問いかけに、返ってきた言葉だった。

 しなやかさに強さを併せ持つ山田哲人の打力。記者席までスイング音が聞こえてきそうな雄平のフルスイング。川端慎吾や畠山和洋もいる。高い技術を持った選手たちが思い切り、気持ちよくプレーしていることで能力はさらに発揮される。そんな個々が集合体となるのだから、強いのは当然だ。

 3連戦は広島が1勝2敗で負け越し。数字以上にヤクルトの強さを痛感させられた3連戦だった。9月22日からの同カード2連戦も、広島の連敗に終わった。

「野球はメンタルのスポーツなんよ」

 故・三村敏之(元広島監督)さんが常々口にされていた言葉を思い出した。


◆三村イズムを誰よりも濃く受け継いだ男。

 誰よりもその三村イズムを受け継いでいるのは、緒方孝市監督ではないか。

 現役時代に指導を受け、監督就任時にも「理想は三村さん」と口にしていた。選手にも「強い気持ち」「生命力がある者が生き残る」など、さまざまな精神論を口にしてきた。

 象徴的だったのは、3月27日に行なわれた13年ぶりの地元開幕戦だ。

 練習前にできた円陣で緒方監督は自らスターティングメンバーを読み上げ、叫んだ。

「絶対勝つぞ! 頼んだぞ! 勝つぞ!」

 遠くからでもその声は聞こえ、記者も熱いものを感じた。

 感情が表に出やすい情熱家は、シーズンが始まれば自分を抑えるように、投手コーチやバッテリーコーチを信頼し、選手を信じた。

 笛吹けど踊らずだったわけでもない。首やひざに痛みを抱えながらプレーを続ける菊池涼介は、内野安打をもぎ取ろうと一塁へヘッドスライディングで滑り込む。

 ベテラン新井貴浩は走攻守いずれも見ている者に必死さが伝わる。助っ人外国人のエルドレッドも平凡な内野ゴロでも一塁へ全力疾走する。精神的強さが足りないようには見えない。


◆現役時代と変わったメンタルコントロールの苦労。

 シーズン終盤、緒方監督は「昔は“夕日に向かって走る”みたいなことがあったけど、今では無理だろうな」と笑った。

 自身の現役時代から大きく変わった今、指導者として選手のメンタルコントロールの苦労が滲む。

 緒方監督は現役時代から、ストイックに自らを追い込んできた。監督になっても誰よりも早くマツダスタジアムを訪れ、スコアラーからの資料に目を通す。試合後には他球団の試合映像を確認するなど、現役時代と変わらぬストイックさだ。

 ただ自分のやり方を押しつけるようなことはしない。時代が違うことは分かっている。

「あまり厳しくしても選手が萎縮してしまう。だから基本的に何も言わずにいた」

 ただ、反対に我慢する姿が、選手へ緊張感として伝わった。若い選手が多いチームなだけにプレーに影響する部分も大きかっただろう。


◆我慢のリーダーが感情を露わにした試合とは。

「ただ、あのときは言わずにはいられなかった」

 珍しく緒方監督が感情を露わにしたことがあった。

 前述の9月6日、ヤクルト3連戦の3戦目。

 カープは6回までに4併殺。先発戸田のボークは失点に絡んだ。山田の二盗に対して捕手石原が投じた先の二塁ベースは、二遊間の連係ミスで無人だった。

 優勝の可能性を残していたチームとは思えぬミスが繰り返された。

「結局ミス、ミスだ。負け試合の要因はミス。もういいかげん、集中力のないプレーはいい。見飽きた。雨が降ろうが関係ない。これだけのお客さんに入ってもらっているんだから」


◆意地の5連勝に見えたヒント。

 翌日から、ナインは開幕したばかりのような体の切れと動き、執念をグラウンドで示した。

 引分けをはさんで5連勝で借金を完済。それは監督の檄に応えたというより、選手たちが示した意地のように感じられた。我慢するのではなく、素直に出す。

 緒方監督が模索してきた方法論のヒントとなるものがあった。そうなると、監督をサポートするコーチ陣が果たす役割も大きくなる。

 いろいろと考えを巡らせていると、目の前の試合はあっさりと終わった。

 ほぼ同時刻に試合が終わった首位決戦は、ヤクルトが巨人に勝ちマジックを点灯させた。

 勝ってまとまり、さらに強くなっていったヤクルトに対し、広島が強くなるためにまとまれなかったのはなぜか。“足りなかったもの”はひとつではない。


☆ま、これは、野球をやったことのある人、特に三村さんのように、プロの厳しい現場で戦ってきた人にしか実感としては分からないことなのかも知れませんが、野球ってね、メンタルのスポーツなんですよ。たったひとつの小さな切り傷が気になってバッティングやピッチングに狂いが生じたり、ほんの少しの感覚のズレでタイミングが合わなかったり。メンタルと集中力の競技ですね。


☆カープのお子たちの「お子ちゃま野球」(笑)、黒田さん・新井さんの活躍。一番の大きな違いは、メンタルの有り様ですよね。




☆9月2日の、セ・リーグ順位表。


① 阪神 119 61 57 1 .517 -
② ヤク 121 62 58 1 .517 0.0
③ 巨人 123 62 60 1 .508 1.0
④ 広島 116 56 59 1 .487 2.5
⑤ 横浜 123 56 66 1 .459 3.5
⑥ 中日 122 53 67 2 .442 2.0


☆この時点では、ヤクルトは首位阪神とゲーム差なしの2位。で、10月2日時点の、セ・リーグ順位表。


① ヤク 141 75 64 2 .540 優勝
② 巨人 141 73 67 1 .521 2.5
③ 阪神 142 70 70 2 .500 3.0
④ 広島 140 68 69 3 .496 0.5
⑤ 中日 142 61 77 4 .442 7.5
⑥ 横浜 142 62 79 1 .440 0.5


☆混戦をスルスルと抜け出して優勝したのは、ヤクルトでした。


 ◇ヤクルト 2015年 チーム月別成績
月 試 勝 敗 分 勝率 得点 失点 打率 本 防御率
3,4 28 15 13 0 .536 80 63 .238 12 1.94
5 25 9 15 1 .375 93 119 .245 17 4.35
6 20 11 9 0 .550 91 72 .263 19 3.34
7 21 12 9 0 .571 113 101 .307 21 4.62
8 26 14 12 0 .538 108 96 .257 21 3.44
9 20 13 6 1 .684 79 52 .247 16 2.25
10 3 2 1 0 .667 10 15 .228 1 4.20
計143 76 65 2 .539 574 518 .257 107 3.31


☆9月は13勝6敗1分。ところが実は、得点は10月を除いて、月間最少。打率も.250を切ってます。その代わり防御率2.25は、3・4月に次ぐ好成績。先発・中継ぎともに、しっかり試合を作りました。


☆一方のカープの9月。


 ◇カープ 2015年 9月成績
月 試 勝 敗 分 勝率 得点 失点 打率 本 防御率
9 24 12 10 2 .545 64 65 .225 11 2.40


☆2つの貯金をしますが、これではヤクルトに届かず。投手陣は2.40と頑張りましたが、チーム打率は.225、得点64は、1試合平均2.7点。ヤクルトは9月が一番得点が少なかったのですが、それで1試合平均約4点ですからね。


☆最後の最後に負けてCSを逃した訳ですが、それよりもやはり、そこまでにもう少し打線が打っていれば取れた試合があるんじゃないかと。もちろん中継ぎが打たれた試合もありますが、何試合連続一桁安打だの、1点ビハインドのまま無抵抗にゲームセットとか、ピッチャーが打たれた印象より、やはり打てずに負けた印象の方が圧倒的に残ってます。


☆ヤクルトやソフトバンクの試合運びを見ていると、圧倒的な打撃力という訳ではなく、またミラクル的な逆転劇を得意としてた訳でもない。どちらかというと序盤から打線がまとまった点を取り、先発が試合を作り、中継ぎが抑えて逃げ切る、というパターンが基本だったように思います。


 ◇ヤクルト 2015年 勝利試合イニング別得点
回  1 2 3 4 5 6 7 8 9 延長 合計
得点 67 51 38 46 55 52 36 57 29 11 442


 ◇ソフトバンク 2015年 勝利試合イニング別得点
回  1 2 3 4 5 6 7 8 9 延長 合計
得点 71 65 49 65 62 41 76 36 36 15 516


☆ヤクルトは最多が初回の67点。以降2位が8回の57点、3位が5回の55点。6回の52点、2回の51点と続きます。序盤の1・2回、そして中盤の5・6回に点が多く入ってます。先制・中押し、といったところでしょうか。


☆一方ソフトバンクは、最多が7回の76点、2位が初回の71点。やはり初回が多い。試合が始まってしばらくして他球場の途中経過を見たら、ヤクルトとソフトバンクは早速点を入れてる、というイメージ。


☆一方、カープ。


 ◇カープ 2015年 勝利試合イニング別得点
回  1 2 3 4 5 6 7 8 9 延長 合計
得点 50 26 43 26 36 55 30 41 26 8 341


☆ま、とりあえず、とにかく得点が少ない(笑)。最多は6回の55点、次が初回の50点ですが、6回は「ようやく点を取った」という印象。2回・4回の26点は、ソフトバンクの65点の半分以下。


 ◇カープ 2015年 敗戦試合イニング別得点
回  1 2 3 4 5 6 7 8 9 延長 合計
得点 28 11 16 23 24 19 8 21 15 0 165


☆一番多いのは初回ですが、これは「初回に先制するもひっくり返され、そのまま押し切られる」というイメージ。また延長では、無得点。


☆総じて、初回以外、序盤までの得点がとにかく少ない。セットアッパー・抑えが守り切れるか、という問題もありますが、ゲームメークということを考えれば、まずは先発が試合を作ること、そして打線が序盤にまとまった点を取ること。その形をまず作ることが、勝利への近道だと思います。


☆もちろん、終盤ひっくり返す底力があれば理想的ですが、やはりまずは「堅実に勝てる形」を作って、そこに自分たちが、はまって行くこと。これは長いペナントレースにも言えることで、シーズン終盤までに、どれだけそれこそ「貯金」を作っておくか。また1年間という長いペナントレースで、どうやって終盤に向け余力を残して戦っていくか、と考えた時、どれだけ「楽に」勝って勝ち星を積み重ねておくか、というのがポイントになってきます。


☆となると、打線の手厚い援護は不可欠。貧打は投手陣にも、そして実は自分たち自身にも精神的に重圧となります。で、そうそうホームランやタイムリーが打てる訳ではないので、どれだけ「チーム力」で点を取っていくか。


☆ヤクルトやソフトバンクは、ランナーに出る人、返す人と、割と役割分担がはっきりしていますが、カープの場合、チーム編成的に、1986年がそうだったように、突出した選手はいない代わりに、どの選手も一定の働きをする、野手8人で束になってかかっていく攻撃が、チームカラーに合っていると思います。


☆1人50打点で、野手8人で、400打点。


 ◇カープ 1986年スタメン野手打点
捕手  達川  46打点
一塁手 長内  58打点
二塁手 正田  11打点
    小早川 24打点
    計   35打点
三塁手 衣笠  59打点
    木下  9打点
    計   68打点
遊撃手 高橋  55打点
左翼手 山本  78打点
    小川  12打点
    計   90打点
中堅手 長嶋  54打点
右翼手 山崎  43打点
計      449打点
(1ポジション平均 56.1打点)


☆何気に、達川さんでさえ46打点ですから(笑)。ちなみに46打点は、2015年で言うと、チーム4位の打点の多さ。田中くんや菊池よりも多い。


☆何気にねぇ、達川さんのような、デッドボールを掠め取るようなバッターが打つと(笑)、強いんですよ、これが。


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source : K.Oのカープ・ブログ。