2017年7月21日金曜日

【特集】「タク論。」に見る、技術と意識の相関。


☆…な~んて、いかめしいタイトルを付けてみたりなんかして(笑)。


◇【連載】タク論。~石井琢朗コーチが迫るセオリーの裏側~ 打撃コーチの仕事。スランプの選手にどう対応するべきか。

石井琢朗「タク論。」広島カープ・石井琢朗コーチの野球論、第二回 2017年06月08日 BEST TIMES(ベストタイムズ)


■.意識はどのくらいプレーに影響をするのか

『意志のないところに形はできない』。
 これが、僕の信条です。 コーチという仕事をするようになってからは特にそう思います。と、同時に『勝ちたい』という気持ちも選手のとき以上に強くなって来たのも確かです。
 では「勝つためにはどうしたらいいか?」。打撃コーチとして「勝つ野球とは?」「勝つための攻撃とは?」と、自問自答する毎日。 そこには、もちろん選手個々のスキルアップが必要不可欠なわけで……。
 その中で、もっとも重要になってくるのが『意識』の問題のような気がしています。


■.スランプに陥る理由を考えてみる
 例えば、一流と言われる打者でも20打席ノーヒットなどという、いわゆるスランプみたいな状態に陥いる場合があります。 果たして、その原因は技術的な部分なのかということです。
 もちろん、多少はフォーム(技術的な部分)が崩れていたりはするのでしょうが、でも大半は気持ちの部分だったりします。 いくら、いいフォームいい形で打とうしても、対峙する相手(投手)は、いかにして打たすまいか、崩そうかと投げてくるわけですから、打者は「崩れて当たり前」。逆に崩されながらも打ってナンボです。
 仮にいい形、いいフォームで打てたとしても『H』のランプがつかない限り、打者というのは気持ちが悪いもの。それが続くと、いわゆる『どツボ』にハマっていくわけで、決して悪くないものまで悪いと考え始める。そこはもう、技術的なものでなく、ほとんど気持ちです。 だから、それが不本意なフォーム、不本意な当たりであっても『H』のランプが点いた途端、次の打席からポンポンとヒットが出たりするじゃないですか。
 じゃあヒットが出始めたときと、ヒットが出ていないときとで違う打ち方、形なのかと言ったら、決してそうではないはずです。もちろん、僕ら打撃コーチとしては 応急処置として、多少の変化をつける場合もありますし、それが仕事なんですが、でも結局は気持ちなんですよね。

 バッティングに関しては、技術があったうえで、そこに「意識」がついてこないと結果を出すことができない、と言えます。だから打撃コーチの仕事も同じように考える必要があります。打てる形、つまり技術を育てること、そしてそこに「意識」をつねに存在させることです。


■.打撃コーチとして伝えたいのは失敗した経験
 これはあくまで僕の考えですが、打撃コーチとしての仕事を次のようにとらえています。
 打撃の技術を指導することとゲームに勝つための打撃をすること。その手段はつねに「意識」が中心になる。

 技術の指導をするにあたって気をつけていることは強要しないこと。でも、引き出しはたくさん与えてあげる。どれをチョイスするかは選手です。
 はっきり言って、バッティングに正解はありません。 方法(理論)はたくさんあるし、多少の確率を上げることはできるけれど、絶対はないんです。だからバッティングは難しい。僕にしても、いくら「2000本」を打ったからと言っても、それ以外のほとんどは失敗です。そしてその、数多くの失敗こそが、今の僕の強みであり支えになっています。攻撃に関しては、いかに成功したかという成功論より、どうして失敗したかの失敗論の方が役に立つんです。
  失敗は成功のもと。
 失敗から何を学び、またそれを今の攻撃にどう生かすか。 そこに、どう意識を持って行くかーーこれが重要だと思います。

 ですから僕は、例えば調子を落とした選手に接するとき「肩の開きが早いよ」とか「上体が突っ込んでいるよ」というような技術的指導をするべきか、それとも「意識」のレベルで改善できるのかを考えます。この場合の意識はメンタルとも置き換えることができますが、こと一軍のレギュラークラスの選手に対してはほとんどの場合が「意識」「メンタル」の問題だったりします。

 というのも、そもそもプロになるレベルの選手たちですから、小さい頃から長年作り上げてきた基礎はあるわけです。もちろんそれは全員が全員できているわけではないですよ。ただ一軍のレベル、いまのカープで考えれば、ある程度できあがっている選手がそろっています。そんな選手たちが「肩の開きが早い」であったり「上体が突っ込む」だったりするのはなぜだと思います? 一般的には、技術的な改善が必要だと思われる状態になる理由です。


■.「自分でそうしている」
 僕は「自分でそうしてる」という理由が多いのではないかと思っています。

 肩の開きが早くなっている。それまでは開かなかったのに、早く開いてしまう状態に「自分がしている」。打てていたときと違う形に「している」。
 裏側にあるのは「メンタル」であり「意識」です。「インコースが気になってしまった」「詰まりたくないから」とか、それこそ「苦手意識を持っているから」肩の開きが早くなってしまう。上体が突っ込む場合は、打ちたいという気持ちが強過ぎる……。結局、自分の気持ちがそういうコントロールをしてしまっているわけです。
 だとすれば、この選手の不調は「意識」のレベルで改善できる可能性があります。そういうときは、外見的な部分でなく、内面的な部分、いわゆるメンタル的な部分をフォローをすることで技術を取り戻してもらうのが僕の仕事になるわけです。


■.ゲームに勝つための指導は「いかに楽に打席に立たせるか」
 一方でゲームに勝ちたい、と考えたとき、そのための打撃とは、いかに気持ちよくゲームに入らせ、いかに楽に打席に立たせるか、ということになります。
 というのも素晴らしい技術を身につけた選手が、3割を打ちました、トリプルスリーを達成しました、といっても、そこにゲームの勝敗は関係しない。

 例えばですけど、三割バッターが9人並んだチームと二割五分のバッターが9人並んだチーム、どっちが勝つかといえば、分からないわけです。三割のバッターが並ぶチームが9イニング、毎回それぞれ一本ずつヒットを打った。3打数1安打で三割三分三厘だったとしても、それじゃあその一本がホームランじゃない限り点にならない。一方で、二割五分が並ぶチーム、4打数1安打のうち1安打をひとつの回に集中させたら、ビッグイニングになります。勝つのは二割五分のチームになるわけです。つまり、勝ち負けは打率では決まりません。極論、打率0割、ノーヒットでも点は取れるしゲームも勝てる。それが野球なんです。
 ただし、選手にとってはチームが勝っても、数字であり結果を出さなくてはゲームに出られないし年俸も上がらない。
 ですから、ゲームに生かす打撃を教える前に、しっかりとしたスキルアップも図らなければならない。 本来は、それが打撃コーチの仕事だと思います。 ただ、どっちにしてもやっぱりそこにあるのは意識なんだと思います。 それこそ、ゲームとなれば、前回も書いた「打順に重要なあとづけ論」なんかはその例だと思います。


■.結果も出してチームも勝つ、それが理想

 ということで、僕のコーチングスタイルは「意識」を手段に、それによって「ゲームに勝てる打撃陣」にすること。それがいまのカープにおける自分の仕事だと思っています。
 それはコーチングというよりティーチングなのかもしれません。はじめてコーチをするときは、それこそティーチングよりコーチング、だと思っていました(自分の本『心の伸びしろ』にも書きました)。けれど、いま考えると僕のしていることはティーチングのような気がします。
 こうしたスタンスってカープだからできることなのかもしれません。迎、東出と打撃コーチ三人体制を取っているので、技術的なことはふたりがしっかり伝えてくれていますし、三人で情報共有もできていますからね。ふたりにはとても感謝してます。
 結果も出してチームも勝つ。
 それが理想ですけど、自分が結果を出したい、この世界を勝ち抜きたい、ゲームで勝ちたいという意識さえあれば形はいくらでも変化もするし、また決まるものだと思います。そういう意味では、僕が選手たちに教えているのは気持ちの部分が大きいのかなと思います。


☆K.Oは、プロのギタリストと一緒にステージに立ったことがありますが、何が素人と一番違うかって、やはり「プロ魂」なんですね。もちろん技術も断然向こうの方が上なんですが、そんなことより何より、プレーに対するこだわり、ステージに向かう心構え、一言で言うと、「プロ根性」。それがもう全く違う訳です。


☆タクローさんの言う「意識」とはまた違うと思いますが、プロが毎回のステージで常に一定のパフォーマンスを発揮できるのは、技術もさることながら、集中力やプロとしてのプライド、仕事に賭ける思いなど、やはり「思い入れ」が素人とは全然違うからなんですね。


☆プロ野球の世界は、それこそオフからもうシーズンが始まっています。自主トレ、キャンプ、オープン戦と来て、シーズンは143試合、ポストシーズンに出れば、CS、日本シリーズと続く。その全てで一定のパフォーマンスを発揮することは、容易なことではありません。


☆人間ですからね。機械と違って、一度覚えた技術を常に100%維持することなんて、不可能な訳です。




☆となると、技術論として例えば「肩の開きが早い」と指摘すること自体に、一体どんな意味があるのか、という問題になってきます。すぐにクリアできる選手もいれば、なかなか理解できない選手もいる。練習ではできていても、試合になるとできなくなる、という人もいます。プロのコーチと違い、我々素人は練習の時から四六時中選手を見ている訳ではないので、どういったことで肩の開きが早くなってしまうのかは、分かりません。その我々素人が、例えばブログでそれを指摘したところで、一体何の意味があるのか。


☆例えばK.Oは誠也くんに関して、ポイントが早い、と再三指摘してましたが、それは、技術的に誠也くんを評価しよう、ということでもなければ、その指摘によって誠也くんが復調する道筋を示そう、という訳でもありません。


☆K.Oが興味があるのは、そこに「人間」の「ドラマ」があるかどうか。誠也くんがいつの日か自分のバッティングを取り戻すとして、そこに至るまでにどんな道のりを辿っていくのか。そこにドラマがなく、単に技術的なことを指摘するだけなら、そんなものは情報社会のご時世、映像解析はパソコンでいくらでもできるし、バッティング理論なんて、そこら辺にゴロゴロ転がっています。よしんは「独自の理論」を披露したところで、それが誠也くんに合ってるかどうかも分からないし、自分の理論が正しかったとして、それをブログで書いて、「だからどーなの?」と自ら突っ込みたくなります(笑)。


☆タクローさんが「失敗から学ぶ」と言ってましたが、丸のフォーム改造も、「内角の克服」から始まって、それで外角が打てなくなる、という「失敗」から、「ドラマ」は始まっています。結果、今年の、左中間方向へ打球の伸びるバッティング、というところに辿り着く訳ですが、その間にも、いろいろありましたわ、そりゃ。そういうところを思い返しながら今の丸のバッティングを見ると、やはり感慨もまたひとしとです。


☆意識は形になる、は、まるでショーペンハウアーの「意志は現象する」みたいで、何だか哲学めいてますが(笑)、逆に言えば、人のすることで形になったもの、全てその根底には「意識」があります。ブログという媒体を使って、技術論をひけらかす人、采配や起用を批判する人、また人をバカにする人。全て、自覚があるにせよ無意識にせよ、何らかの「意識」から出てきたものが、「ブログ」という形となって現れている訳です。


☆バッティングも、もちろんそう。一定の技術を持った選手がスランプに陥ったりするのは、人間には技術を100%維持する、なんてことはできないから。だとしたら問題は技術そのものではなく、「意識」の方、ということになります。


☆これは落合さんも言ってることですが、プロに入ってくる選手というのはみんな、一定の資質を持ってる。誰でも打率.280、ホームラン10~20本くらいは打てる。ただ、その資質をどう生かし、どう長くプロの世界でやっていくのか。問題は、そこな訳です。


☆で、どうやって未来を切り開いていくのか、そこに「ドラマ」が生まれます。そこが面白い。


☆今のカープというチームも、急に強くなった訳ではありません。K.O的には、野村監督時代にまで遡って、丸と菊池がレギュラーに定着した頃に、その萌芽がある、と見ています。となると、少なくとも7~8年はかかってる訳です。


☆そこを見ていくのが一番面白いんであって、やれ勝っただ負けただ、采配がどうだなんて、本と二の次、三の次ですわ(笑)。




◇7月21日(金)の予告先発投手

○東京ヤクルトスワローズ
D.ブキャナン
16試合5勝6敗 防御率3.25 WHIP1.33
対T 3試合3勝0敗 防御率1.35 WHIP88.85
 VS (神宮 18:00)
○阪神タイガース
秋山 拓巳
14試合7勝4敗 防御率3.44 WHIP1.18
対S 2試合0勝1敗 防御率2.19 WHIP -

○横浜DeNAベイスターズ
井納 翔一
14試合4勝4敗 防御率3.34 WHIP1.20
対G 3試合1勝1敗 防御率2.84 WHIP161.48
 VS (横浜 18:00)
○読売ジャイアンツ
田口 麗斗
14試合8勝2敗 防御率2.09 WHIP1.09
対DB 1試合1勝0敗 防御率0.00 WHIP38.00

○広島東洋カープ
K.ジョンソン
7試合4勝2敗 防御率3.95 WHIP1.48
対D 1試合1勝0敗 防御率2.57 WHIP35.14
 VS (マツダ 18:00)
○中日ドラゴンズ
R.バルデス
17試合5勝5敗 防御率2.93 WHIP1.15
対C 2試合0勝1敗 防御率7.30 WHIP -


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source : K.Oのカープ・ブログ。